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2018.10.20 CONCEPT

とりかえのきく世界、きかない世界

空間をつくるという行為は、どんなに小さな空間であれ、世界の一部をつくる行為だという自覚がある。未来の世界がどのようであってほしいか、というクライアントの願いや祈りに、ぼくらの願いや祈りを重ね合わせて、今よりもよい未来の世界になるように、できるかぎりの力を尽くすことがぼくらの責務だ。

今年20周年を迎えたぼくたちグリッドフレームは、未来の世界を今より愉しくするために、どんな目標を立てて空間づくりを進めていくのか、を改めて考え直し、新しいキーワードをつくった。

それは、<「とりかえのきく世界」と「とりかえのきかない世界」をつなぐこと>である。




1.とりかえのきく世界

ぼくらは、世の中が加速度的に快適、簡単、便利になっていくのを日々目の当たりにしている。グローバルな資本主義は、世界を均一化する方向へぐいぐい牽引していて、だんだんどこにいても変わらない生活ができるようになってきている。

30年以上前にぼくが東アフリカを一人旅したときは、明らかに日本人を見たことがない現地の人たちがたくさんいた。満員の長距離バスで当たり前のようにぼくの膝の上に置かれた黒人の赤ん坊は、真ん丸な目で不思議そうにぼくの顔を見つめながら、ぼくの顔をずっといじくり回していたけれど、今ではもうそんなことはどこにも起きそうにないくらいに、ビジュアル情報は世界を覆いつくしてしまった。




多くの組織では誰もが精度の高い部品のように均一化されることで、とりかえのきく存在として働き、絶え間なく続く生存競争の中で奮闘している。そして、その間も、生活はただ快適、簡単、便利な度合いを増していく。

そんな、ぼくらが生きている<とりかえのきく世界>には、次のような特徴がある。

<とりかえのきく世界>
・秩序の世界(速い、便利、簡単、明確が価値である)
・閉じた集合の中の世界
・多くの中の一人として存在する
・性質は比較され、ランク付けされる
・多対一の関係(他人の目でモノを見る)
・相手を手段として見る
・出来事はくりかえしが可能


2.とりかえのきかない世界

一方で、ぼくらは自分をとりかえのきかない存在として大地に繋ぎ止める必要がある。とりかえのきく存在としてのみでは、魂の拠り所を失って、根無し草のように宙をさまよってしまう。




魂の拠り所としての<とりかえのきかない世界>には、次のような特徴がある。

<とりかえのきかない世界>
・混沌の世界(そのままでは意味がないが、自分が向き合えば発見の可能性がある)
・無限に開かれた世界
・絶対的に一人として存在する
・性質は比較されない
・一対一の関係(自分の目でモノを見る)
・相手を目的として見る
・出来事は一回きり


3.2つの世界を行き来できる装置

ぼくらは、全く反対の性質を持つこれら2つの世界を同時に生きていて、それらを行ったり来たりしている。だから、ぼくらは、だれもがある程度二重人格的だ。そして、2つの世界は、互いに論理的に閉じているため、どちらか一つの世界に偏った人同士では、お互いを理解し合うことが難しいこともあり、そこから数々の問題が発生している。

多くの人が、2つの世界を自由に行き来できる装置を必要としている。




ぼくたちグリッドフレームは、空間のつくり方によって、これら2つの世界を行ったり来たりする装置をつくれると考えており、これまでにも、それを根源的なテーマとして様々な空間をつくってきた。

例えば、カフェには心休まる環境が必要だ。ぼくらは、何も考えたくないときには、とりかえのきく世界の、たくさんの人間の中に紛れるような環境に身を置きたいと思う。その方が心が休まるからだ。そのような空間は、どこにでもあるような内装でかまわないだろう。

けれども、その空間のディテールには何か見慣れない、不思議で複雑な質感があるとする。それは、ぼーっと眺めれば、意識の中に入ってくることもないけれど、焦点を合わせれば、思わず引き込まれて見入ってしまうようなものだ。カスタマーは、ぼーっと眺めれば、風景として見えてくるため、とりかえのきく世界に留まることができ、焦点を合わせれば、そこに一対一の関係が成立し、とりかえのきかない世界が開示される。カスタマーは、選択的にどちらかの世界に属することができるのだ。

今後も、ぼくらがめざすのは、このような空間だ。

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