PEOPLE PROFILE

田中 稔郎

STAFF 001

田中 稔郎

TANAKA TOSHIRO

熊本県出身。
小2から高3まで柔道一直線。
小6・中2のとき、全国大会団体戦で優勝。
京都大学および同大学院で土木工学を専攻。在学中からアフリカ・南米・アジアなど発展途上国を中心に27カ国を旅する。
ゼネコンに就職後、ニューヨーク州立大学大学院へ留学し、建築を学ぶ。
同大学院のユニバーサルデザインホテルコンペ最優秀賞、年間最高プロジェクト賞受賞。
在学中にグリッドフレームという建築のシステム材を考案。
1998年6月にグリッドフレームを設立。

PEOPLE INTERVEW

中国へ自転車を持ち込み、内モンゴルの草原を800キロ走ったことがある。

360度地平線、という世界を爽快に走り始めたが、途中でアスファルトの道は途絶え、いつか道すらなくなってしまった。まあ、すべてが道といえば、そうなんだけれど。

夕方に運よくパオ(遊牧民のテント)を見つけると、訪ねて行って泊めてもらった。まずは歓迎のしるしとして、どんぶりに酒をなみなみとつがれる。飲み干すと、疲れた体にはてきめんで、ばったりと倒れ、数時間寝る。

起き上がると夕闇せまる草原で男たちはモンゴル相撲をやっている。柔道少年だった私は混ぜてもらって、何人かの相手をころころ転がす。男たちの中で一番強い人が出てくる。取っ組み合うがいつまでも決着がつかない。女たちもやってきて、みんな楽しそうに周りを囲んでいる。

彼らはこんなふうに何百年も何千年も過ごしてきたのだろう。

中国領内なので、何人かは筆談ができる。どの国に行っても、最初の質問は「どこの国から来たのか?」だけれど、彼らだけはその質問を最後までだれもしなかった。

遠くから来た客人。おそらく彼らにはそれで十分なのだ。ひょっとしたら、自分たちが中国という国に属していることすらも彼らは知らないのかもしれない。人と人を区別するには、彼らの生きる場所はきっと平坦すぎるのだ。

空間が人をつくる。無意識のうちに、私たちは周りの空間に影響を受けながら、生きている。

未来へ向かって、私たちはどのような空間をつくっていこうか?

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